第1部:釜石駅〜陸中大橋駅からのつづき

 国道を行って戻って,峠を登って,道に迷う.



第2部:上有住駅〜岩手上郷駅



6.上有住(かみありす 1950年10月10日開業 花巻まで65.4km)
 陸中大橋の後は国道283号線を引き返す.洞泉駅も過ぎて,仙人峠道路との分岐点まで戻る.次の上有住へは途中の県道167号線経由でもいいが,明らかに「険道」なので近くにICがある仙人峠道路を行った方が断然早く到着できる.
 高規格の仙人峠道路を進むと全長約4.5kmのトンネルに入る.そのトンネルを抜けるとすぐ滝観洞ICがあるので,そこで一旦仙人峠道路から降りる.ランプウェイがかなりややこしいが,すぐ近くに上有住駅がある.近くに滝観洞という観光地があるのだが,仙人峠道路のICは元々緊急避難所として作られた道路を地元の要望で整備・改良したものらしい.
 この駅は,アイオン台風により寸断されてしまった山田線の代替線として釜石線が整備された時に開業したもので,周囲の駅に比べて開業時期が遅い.そのため国道283号線(旧道)からも大きく離れ,かなり浮いた存在になっている.今は棒線だが,かつては石灰石を運搬するする貨物線が分岐していたようだ.その名残が今も草木に埋もれる形で残っている.
 棒線化,貨物線の廃止とも1993年と,それほど遠い過去ではない.


もと来た道を引き返して仙人峠道路へ.




Googleマップより.上有住駅へのアクセス.
A点が新旧の分岐点.B点が滝観洞IC.
仙人峠道路ができる前は県道167号線を進むしかなかった.しかも県道は一部区間が冬季閉鎖になるため冬場は簡単には駅へ行けなくなる.




仙人峠道路.延々と上り坂になっている.




途中にある新仙人トンネル.全長4492m.隣にはもう1つのトンネルが用意されている.ゆくゆくは上下線に分割されるようだ.




トンネルを抜けるとすぐ滝観洞IC.地元のエゴで無理矢理作ったものだが,今回のラリーではありがたい存在.
ランプウェイは急坂でカーブがきつく,制限速度が20km/h.




ランプウェイを抜けると県道167号線に出る.ここは左折.




そのまま県道〜町道(住田町)を進むと駐車場があり,車両通行止めになる.通行止めの先が滝観洞.
ここは道なりに橋を渡って坂を進むと行き止まりが上有住駅.




上有住駅到着.バスも通っており,終端部はバス用の折り返し点になっている.




柵も無く道路終端部と線路が並ぶ.




上有住駅入口.再び日差しが.




バスは1日6本のようだ.ちなみに上有住駅は住田町内唯一の鉄道駅で,町の北東部末端にある.




ホームへの入口にはやたら立派な看板が.




反対側には駅周辺の簡略図がある.国道283号は仙人峠道路が描かれているが,インチキも甚だしい.




駅は道路からかなり高い所にある.




ホームへの通路は柵があるが,かつてはここにレールが敷かれていた.これは花巻方を向いて.




こちらは釜石方を向いて.線路を撤去した場所に待合室が作られている.




待合室は倉庫と2分されている.




待合室に公衆電話.こんな山間の小駅に公衆電話とはいかに.




電話帳も置かれている.




発車時刻表.滝観洞などお構いなしに快速は通過.




運賃表.




駅名標.




こちらはエスペラント駅名標.




「Kaverno(カヴェルノ:洞窟)」




上有住駅構内.かつての下り線が現役.




現役線路脇に側線が埋もれていた.




これが鉱山鉄道線の名残だろうか.




上写真と同じ場所から釜石方を向く.レールはどこまで残っているのだろうか.




釜石方の本線.下り,そして行き違いの名残があるカーブ.




一方花巻方に向かっていくと,しばらくレールが伺えた.




途中にポイントもあった.




さらにもう少し花巻方に行くと,簡易踏切が.何かのポストがある.




「日鉄釜石鉱業所専用線」とあった.やはり鉱山鉄道線の名残だ.




背後には「延長三二六米」とあった.日付は読み取れない.




そしてこれが花巻方の末端部.片方は車止め,もう片方はおそらく本線に繋がっていたのだろう.
廃止時期が大昔でないとはいえ,こんなに名残があるのも珍しい.




道路側にも点々と枕木が散らばっている.かつての下り線に使われていたものだろうか.




撮影し忘れたが,麓にはトイレがある.駅にはトイレが無いので用足しはここで.



7.足ケ瀬(あしがせ 1914年4月18日給水場開設 1914年10月25日信号場開設 1915年11月23日駅昇格 花巻まで61.2km)
 上有住から引き返して再び仙人峠道路に入る.滝観洞ICは釜石方面と遠野方面で入口が別々にあるのでややこしい.遠野方面に入り,そのまま終点の国道340号線合流点まで突っ切る.時刻はすでに9:30を回っている.遠野駅着10:30は絶望的.だが少しでも早く進まなくては,と考えながら走っているとやはりミスを犯してしまった.
 手元に道路地図とは別にGoogleマップを印刷したものを携行しているのだが,要所だけを頭に入れているため,細かい表記などは見落としてしまう.しかもバイパスなどが建設されている場合,現在の道路と一致しない場合も多く,これが元で先に青笹駅に着いてしまった.これはかなり大きな時間と距離のロスである.ただでさえ遅れているのにこれでは目も当てられない.焦りがミスを引き起こし,さらに焦るという悪循環にはまりつつあった.これについては後ほどマップを見ながら解説しよう.
 こうしてやっと辿り着いた足ケ瀬駅は釜石線最高標高駅.高々473mだが,釜石駅から30kmあまりでこれだけの標高に達するのだから凄い.
 足ケ瀬駅から西は元岩手軽便鉄道をほぼ忠実にトレースしている.当初は仙人峠付近で徒歩ルートになっていたということは先に述べたが,その頃は別ルートで仙人峠という駅まで線路が敷かれ,そこから徒歩ルートになっていた.そして,何度も触れるが,山田線の台風被災に伴い徒歩ルート部分が陸中大橋駅まで繋げられ,足ケ瀬駅〜仙人峠駅間が廃止される形で現在の釜石線ができあがった.この駅から起点の花巻駅まで開業時期が大幅に早まっているのはこうした歴史的背景が絡んでいる.
 現在の足ケ瀬駅は無人ながら行き違い駅.ここも陸中大橋駅,上有住駅と同じく1993年に無人化されたようだ.


再び仙人峠道路を通る.もと来た道をそのまま引き返そうとすると釜石方面に向かうことになってしまう.




Googleマップから.印刷して持っていたのだが,これが勘違いの引き金になった.



 ここで今回のミスルートについて解説しよう.
 南からA点に伸びてくるのが国道340号線.A点からB点までバイパスルート(緑色の線:マップには記載されず)が開通した.B点〜E点は先行開通したバイパスルート(上郷道路)で,これにより当初A点〜D点のルート(赤線の区間)であった国道340号線が国道指定から外れて旧道落ちした.
 一方仙人峠道路はB点で国道340号線と合流している.なお途中のC点は相互に行き来できない立体交差である.
 国道283号線と340号線との合流点は当初D点であった.それが仙人峠道路開通によりB点(仙人峠道路)とE点(283号旧道)の2点になったのだ.
 ところが筆者はこのマップを次のように勘違いしていた.
 仙人峠道路はE点まで続き(ここで「上郷道路」の表記を見落としている),E点で国道283号線旧道および国道340号線と合流すると思い込んでいた.そのためB点に到達した時点でE点に到達したと勘違いし,何の疑いも無く右折した後は道なりに直進した.ところが実際はB点から直進しているため,青笹駅に着いて初めてミスに気づいた.
 ここで慌てて引き返す.(E点から)右折したはずがいつの間にか左折したことになっている.頭の中が「?×50」のまま走っていると,E点手前に国道283号旧道への案内が見えた.最初はこれを完全に見落としていたのだ.これに最初から気づいていれば,そこで間違いに気づいたものを.時間に追われて焦るとこんな冷静な判断もできなくなる.


仙人峠道路.今度は2996mの滝観洞トンネル.




そして仙人峠道路の末端に到着.ここはマップのB点.




あれ?ここは国道340号線単独区間なのか?すでに重複区間のはずだが・・・?
(B点をE点だと思い込んでいる)




B点を右折後,おだんごを確認.一体何なんだ,さっきの青看板は?
(この後青笹駅に着いてしまい,慌てて引き返す.)




あまりにもお馬鹿なミスに気づき,撮影など忘れてひたすら国道283号線旧道を釜石方面へ走る.
ようやく足ケ瀬駅に到着してほっと一息.




国道からの入口.商業施設など全く無い住宅地.




足ケ瀬駅舎.




待合室と倉庫が分かれる形.




待合室には目立ったものは無かった.さすがに公衆電話は無いか.




発車時刻表.




運賃表.遠野駅まであと4駅だが・・・




駅舎左端からは待合室を経由せずにホームへ行ける区画がある.待合室の意義が薄らぐ.




足ケ瀬駅構内.ホームは花巻方に向かって緩い右カーブ.




釜石方を向いて.下り線脇に側線がある.




側線は途中で行き止まり.




だが側線脇には見慣れたものが.バラスト積み込み用だろうか.




駅名標.




エスペラント駅名標.




「Montopasejo(モントパセーヨ:峠)」
最高標高駅らしい愛称だ.




駅舎とホームの間は階段とスロープ.一応弱者に優しい構造のようだ.




どうやらトイレがあるようだが・・・




無情にも鍵がかかっていた.まあボットンだから別にいいか.



8.平倉(ひらくら 1915年11月23日開業 1950年10月10日移設 花巻まで56.6km)
 時刻は10:00を回った.遠野駅到着はいつになるのか.今回のラリーもまた途中断念を覚悟しなければならないようだ.
 国道283号線を折り返して遠野方面へ進む.途中住田町方面へ抜ける市道があるので,そこへ入る.この市道は国道340号線旧道落ちの区間へ繋がっていて,その途中に平倉駅がある.
 平倉駅は元行き違いの棒線駅.岩手軽便鉄道時代は300mほど花巻側に駅があったようだ.駅は一軒家の庭先にあり,その家の倉庫と勘違いしてしまいそうだ.


国道から市道へ入る.




途中釜石線を跨ぐ.平倉駅が見えた.




市道沿いに平倉駅.駅舎は小屋にしか見えない.




振り返ると仙人峠道路が見えた.




平倉駅舎.やっぱりただの小屋.




目の前が一軒家の庭先.敷地の境界線が分からない.




待合室は広め.




清掃用具まで置いてあった.スノーダンプは必需品か.




発車時刻表.




運賃表.




こんなものが掲示されていた.




快速「はまゆり」1号が通過.駅に到着するタイミングがいい.わずか数分の待ち伏せで撮影できた.
キハ110-3は,喫茶店ラリーでは自由席だったがこの日は本来の指定席.




平倉駅構内.行き違いの名残がある.




釜石方も線路が曲がっている.すぐ先で跨いでいるのが先ほど通って来た市道.




駅名標.




エスペラント駅名標.




「Monta Dio(モンタ・ディーオ:山の神)」
だが周辺は田んぼが多いちょっとした平地.



9.岩手上郷(いわてかみごう 1914年4月18日貨物駅開業 1914年5月15日旅客駅昇格 1916年2月10日改称 1950年10月10日移設 花巻まで53.8km)
 市道から国道340号線旧道落ち区間を経て国道283号線旧道に復帰.岩手上郷駅は足ケ瀬駅へ向かう途中に一度確認しているので問題なし.国道沿いなので楽に行ける.
 この駅は当初「上郷」という貨物駅として開業した.それから1年ほどで駅に昇格し,さらに「岩手上郷」に改称.これは山口県の山口線に「上郷」駅が存在することによる.さらに釜石線の全線開通整備時に400mほど花巻側に移設された.
 現在は無人駅ながら行き違い可能.1993年までは有人駅だったようだ.今まで辿って来た駅のうち,陸中大橋駅なども1993年に無人化されており,どうもこの頃釜石線の一大整理が行われたらしい.
 またこの駅にはなぜか肝心のエスペラント駅名標が無かった.ホームの端から端までくまなく探したがどこにも見当たらず,またその愛称を知る手がかりさえ無かった.理由は不明だ.ちなみにこの駅のエスペラント愛称は「Cervodanco(ツェルヴォダンツォ:鹿踊り)」である.


国道283号線から.コンビニ前を左折.看板は「上郷駅」と書いてあった.ちょうど駅前の道路ペイントを塗り直す工事中.
あれ?喫茶店があるぞ.




国道を左折すると突き当たりが駅.道路ペイントの塗料は結構きつい臭いだ.




岩手上郷駅.駅前は結構広い.




久しぶりにこのアーチがお出迎え.




工事現場などで目にする簡易トイレ.どうやらこの駅の本トイレのようだ.




ペーパー付きで簡易水洗式.せっかくなので記念トイレ(笑).




待合室はホームにある.
急に日差しが.晴れたり降ったりと今日は忙しい天気だ.




発車時刻表.快速が1往復停車.




発車時刻表.




岩手上郷駅構内.下り線脇に側線がある.




こちらは釜石方.線路の曲がり具合からして側線がかつて本線だったのかもしれない.




側線はホームの名残がある場所で止まっていた.昔は結構大きな規模だったのかもしれない.




ホームと入口を結ぶ通路.やはり階段とスロープがある.




駅名標.




待合室にあるゴミ箱が唯一のロゴマーク.だがエスペラント駅名標はどこを探しても無かった.




側線と下り線の間から釜石方を見た.かなり広い構内だ.




アーチ付近にもしかしたらエスペラントが・・・と思ったがやはり無い.



 遠野市中心部を目指す.時間が押している.果たしてラリーは1日で終えられるのか?

第3部:青笹駅〜鱒沢駅へつづく

inserted by FC2 system